毎月5万円の貯蓄。これが、総務省が公表した家計調査(2017年4月)による、毎月の貯蓄額です。ちなみに、この数字は二人以上の世帯ですから、独り身の世帯は除かれています。月の手取りが384,297円、そのうち消費が329,949円、貯蓄が54,348円という内わけです。実に、手取りの14%を貯蓄していることになります。
今回は、なかなかお金が貯まらないとお悩みの方のために、家計改善が必ずうまくいく21のステップをお教えしようと思います。
ステップ1:額面収入を知る
あなたは、手取りの10%以上貯蓄ができていますか?お金が貯まらない原因は1つしかありません。入ってくる以上にお金を使っているはずです。貯蓄の計算式は、収入―支出となります。収入は通常、額面と言って税金や社会保険料が含まれています。
いわゆる給与明細の支給額というのは、額面収入です。一年を通した額面収入は源泉徴収票の年収です。年収はいくらですか?と聞かれた場合に応えるべきは、源泉徴収票の総支給額です。住宅ローンを始めとする借入をする場合の年収は、この額面収入を記入します。
ステップ2:手取り額を知る
その額面収入から、厚生年金保険料、健康保険料、雇用保険料、住民税、所得税を差し引いて手取りを計算出します。
手取り収入が実際に使える金額になります。経済の勉強をした方は可処分所得といういい方の方が聞きなじみがあるかもしれません。手取りと可処分所得は同じ概念です。
収入はいくらですか?と聞かれたときに、多くの人は手取りを答えます。しかし、詳しい人になると、額面ですか?手取りですか?と確認します。こういったやりとり一つから、お金に対する感度がわかるのです。ちなみにFPからの質問の場合、手取りはいくらですか?と質問することもあります。一般的には、給与振込口座に会社から振り込まれる金額が、手取り金額となります。
注意したいのは、社宅扱いの家に住んでいる場合に家賃相当分が引かれていたり、財形貯蓄や保険料の給与天引きを選択している場合です。手取り金額から、住宅費や保険料が引かれているため手取りを少なく感じるとともに、支出が正確に把握できない原因となります。
また、余談ですが、勤務先の家賃補助や社宅制度がある場合、実質的に使えるお金が同額の額面給与を得ている人よりも多いため、支出が多くなりがちです。そのため、社宅からでなければならない年齢になった場合や、家を買おうとした場合に住宅ローンの支払ができないことが多くなります。家賃補助や社宅は制度としては非常に優れている一方、ぬるま湯につかるというと表現がわるいのですが、制度に甘んじて支出の管理が甘くなってしまうと、将来マイホーム購入時に苦労します。
ステップ3:毎月の収支(黒字か赤字か)を知る
毎月の家計がプラスなのかマイナスなのか確認しましょう。現状を知らないことが最も危険です。プラスかマイナスか答えられれば御の字と考えましょう。どちらか知らないという事は把握ができていないことの証明です。
給料が振り込まれてから次月の給料が振り込まれるまでの30日の間に、あなたの銀行口座の残高は増えていますか?減っていますか?過去12ヵ月分さかのぼって、給料日前の残高を書き出しましょう。賞与(ボーナス)が出ている場合は、賞与日前の残高も確認ください。過去12か月分の給料日前の残高は増えていますか?減っていますか?賞与前の残高は前回と比べて増えていますか?減っていますか?
プラスの場合は、過去12ヵ月にわたり毎月いくらのプラスであったか、マイナスの場合も過去12ヵ月の間に毎月いくらずつマイナスであったかを書き出しましょう。エクセルなどの表計算ソフトを使えば、手間をかけずに集計しましょう。
ステップ4:支出の内訳を知る
プラスかマイナスか確認したら、次は支出の内訳を細分化しましょう。内わけに関しては、何を書けばいいのかわからない方が多いでしょうから、家計簿を買って書き出してもいいですし、インターネットで家計簿のひな形をダウンロードするのもいいでしょう。弊社でも無料で家計簿のひな形をプレゼントしておりますので、必要な方は問い合わせフォームから請求ください。
すぐにわかるのは、住居関連の費用で家賃、共益費や住宅ローン、管理費、修繕費でしょう。他に、水道光熱費、生命保険や共済の掛け金、電話代、プロバイダー料金、携帯電話代などの通信関係費、定額のこづかいは毎月発生しており、通帳又はクレジットカード明細への記載がありますので、金額を知るのが容易です。
一方で、把握が難しいのが、食費、日用品費、交際費、交通費、美容費、医療費、雑費など、日常生活で発生してくる支出です。意識してお金を使うことがなく、ごく自然に生きるために使うお金ですので、毎日、毎月金額が変わります。すると把握が途端に難しくなるのです。内わけがわからない場合は、生活費という大きな枠を設けて、住居費と別枠にするだけでもいいでしょう。
つまり、手取り収入―住居費―生活費=毎月の収支。となる計算です。このくらいざっくりとした数字でも始めは問題ありません。むしろ、細かく書き出そうとして挫折するのがもったいない。いかにハードルを低くして取り組みやすくするか、自分がどの程度なら負担がなく家計を把握できるか、自分と相談してください。FPはマニアックなほど家計を細かく管理する方もいますので、趣味で細かすぎるのはいいのですが、日常の事ですから細かくなりすぎない方がいいでしょう。細かくつける時間があるなら、すこし楽をして他の事に力を残した方が生活のクオリティが上がると思います。
ステップ5:支出を記録する
前のステップで分けた支出項目に実際の数値を拾い集めて転記しましょう。通帳とクレジットカードの明細があるといいでしょう。
家賃は時に更新料がかかる場合もあります。持家の方は固定資産税などの不動産保有税がかかります。自動車をお持ちの方は車検、車検時の部品交換代、自動車税、自賠責保険料、自動車保険料など細かく分けるのが理想です。ただ、細かいと書き出しが大変ですので、実際に支払った金額を自動車関連費としてまとめてしまうのもアリです。
生命保険や共済の掛け金は、引き落とし額をまとめて書き出すか、一つ一つの契約を分けて書き出してもいいでしょう。保険関連は分けた方が見直しがスムーズです。
携帯電話代金、固定電話、インターネットプロバイダー料金、Wi-Fi料金など、ひとまとめになっていることもありますが、分けた方が見直しが容易です。とくに近年は、NTTDoCoMo、au、Softbankなどの大手キャリアの携帯電話が高いため、政府も通信費の削減を意識し始めました。そのような流れの中で、大手キャリアの回線を借りて、安価な通信料での携帯電話サービスを行う格安スマホ業者が現れました。機種代も1万円程度から選べ、毎月の通信費は1,000円~2,000円程度に収まるため、見直し効果は大きいです。
このように、支出の内容がわかれば、見直し方法が簡単に見つかる場合もあります。一方で、見直しが難しいのは食費や日用品費です。単純に安いものを必要な分だけ買えば支出は下がるのですが、日常の買い物の他にコープや生活クラブなどの宅配サービスを利用していると、あったらいいいなの買い物が増えるため、食費が膨らみがちです。宅配サービスの場合は、月に一度請求がきますので、金額がすぐにわかるという点があります。スーパーなどで買い物をしていると、その都度支出を把握する必要があります。また、レシートの出ない店舗で買い物をすると、使途不明金となってしまうこともあります。
まずは、わかる範囲で金額を把握しましょう。不明な点は調べるか、諦めるか、大変さを踏まえて検討してください。
ステップ6:毎月の収支を把握すべきか検討する
月の収支が出たところで油断は禁物です。何故かというと、金額に誤りがあることがほとんどだからです。支出を完璧に把握している人は、ほとんどいません。家計簿をつけていても、家計簿アプリを利用していても、漏れは発生するのです。
ですから、2~3ヵ月分は収支の明細を書き出す作業を続けた方が、数字の変化もわかりますし、平均値も出ますので数値に正確さが出てきます。正確性に欠けた数値を使って予算をつくると、毎月足りなかったり、工夫していないのに毎月余剰がでたりします。実態に近い数値をどのように算出するかがとても大切です。自分でできないと思ったら、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談すると良いでしょう。色々な方の事例があるはずですので、あなたの近況に近い情報や、同じように数字の管理が苦手な方で上手に家計をやりくりしている方の情報がもらえるかも知れません。
ステップ7:家計把握のツールを検討する
家計簿を買うでもよし。エクセルで家計簿つくるもよし。家計簿アプリをダウンロードするもよし。ツールは何でも構いません。エクセルで出力した用紙に手書きで書き込むスタイルが、頭に入りやすいと思います。慣れてきたら家計簿ソフトを選ぶといいでしょう。
ステップ8:家計把握ツールを購入または導入する
家計把握ツールが決まったら、導入します。具体的に買うなり、作るなり、ダウンロードするなりします。アプリの場合は、金融機関のオンラインバンキングとの連携が必要ですので、オンラインバンキングの設定がまだの場合は、新規にオンラインバンキングの契約をする必要があります。
ステップ9:家計を記録する
月に一度でもいいですし、毎週でも構いませんので、支出を記録しましょう。手帳に毎日記録する方法でも構いません。楽な方法で続けやすい方法で支出を記録してください。書くのが面倒な方は、家計簿アプリがお勧めです。パソコンを使う方はエクセルで独自の家計管理シートをつくるのもいいでしょう。目的は負担なく家計を記録することです。
ステップ10:毎月収支を確認する
今月は黒字だった。でもたまたまだった。では意味がありません。恒常的に黒字にするには、毎月の支出を把握することが必要です。数値化されるから改善されるのです。収支の変動を理解することで、黒字と赤字にも波があることがわかります。どの時期に支出が増えるのか、臨時の支出にはどのようなものがあるのかを調べる前段階です。
ステップ11:削減可能な支出をリストアップする
毎月の収支を確認して支出を減らそうと思ったら、どの支出を減らすかを書き出しましょう。例えば家計見直しの王道は、①生命保険と共済の掛け金、②携帯電話代金の2つです。
このほかには、減らしたい支出は何かを考えてみるといいでしょう。
ステップ12:支出を削減する
具体的に見直しを実施します。生命保険や共済であればプランの変更や加入のし直し、携帯電話であればキャリア変更やプラン変更、使わないオプションの解約などとなります。
ここで難しいのは、自分の支出に間違いを見つけるのは難しいという事です。日々の生活に無駄があるとは考えにくいものです。そもそも無駄だと思って無駄遣いをしている人はいないのですから、第三者がみることで無駄と感じるのです。第三者は家族や友人でも構いません。専門性が必要であればファイナンシャルプランナーに相談すればいいのです。
家族や友人に相談する場合は、守秘義務と言いますか、情報を他人に話さない様に念押しをした方がいいでしょう。●●は結構貯めているのよ!あるいは、全然貯金が無いらしいわよ!などといったゴシップに巻き込まれないとも限りません。専門家は守秘義務がありますので、ベラベラ話すことはありませんので、安心して相談ができるでしょう。
ステップ13:統計上の支出の構成比を計算する
総務省の家計調査(下記収支)を見ると、非常に細かい支出の数字が書いてあります。その情報をもとに、一般的に収入に対して何%の支出があるのかを計算しましょう。例えば食費●%、水道光熱費●%といった具合です。他人の懐具合を知るという事ではないのですが、比較する数値が無いと自分が良い状態なのか悪い状態なのかすらわかりません。比較をすることが、改善において効果があるのです。
ステップ14:自分の家計支出の構成比を計算する
次に、自分の家計支出をパーセントで表現してみましょう。100%を超えたら家計がマイナスになっていることを意味します。85%の支出を目指してみましょう。
ステップ15:統計上の支出構成比と自分の家計支出構成比を比較する
家計調査は支出が上手くまとまった状態になっています。支出が85%未満にできた方は、80%、75%などと支出の割合を減らしていきましょう。
ステップ16:自分の家計支出構成比で統計値と比べて大きい項目の支出を見直し余地を検討する
家計調査の支出が少なすぎると感じた場合、あなたがお金を使いすぎている可能性があります。各支出毎の金額÷手取り額×100とすることで、各支出毎の構成比がわかります。構成比を比較して最も差が出ている項目から支出内容を確認しましょう。
ステップ17:見直すべき支出が多い場合は、見直しの優先順位をつける
色々な支出が、統計データより多い場合は、項目を絞りましょう。例えば、減らしたい支出トップ5であるとか、大きな支出上位5位までなど、対象を絞ると支出削減に取り組みやすいでしょう。また、見直す場合は労力なども発生しますので見直しの優先順位をつけましょう。
ステップ18:見直し後の支出予算を決める
家計が見直せそうと感じたら、今後の支出項目ごとに予算を決めましょう。無理のない金額がいいでしょう。
ステップ19:見直し後の予算で一月生活する
見直しが済んで予算を決めたら、その予算内で生活できるか試してみましょう。できなくても構いません。予算が間違っているかもしれません。手が届きそうな予算をどのように達成するか、これがやりくりというものです。
ステップ20:見直し後の予算で収まったか確認する
試しに生活してみて、結果を振り返りましょう。予算がオーバーしていれば、原因究明。予算内に収まった場合でも、より予算を削減できる余地が無いか考えてみましょう。
ステップ21:予算が過大な場合は縮小する、予算が少なすぎる場合は予算を拡大する
どう頑張っても予算が達成できない場合は、予算設計に無理がある可能性があります。その場合は遠慮せず、こだわらずに変更しましょう。無理は禁物です。続けることに意味があります。
以降、ステップ18からステップ21を納得のいくまで繰り返す。
この過程で手書きの家計簿だと労力がかかりすぎて挫折することが予想されます。そのため省力化、省エネ化が実現できる家計簿アプリの導入をお勧めします。あなたの時給が1,000円で、家計簿づけにかかる時間が一月5時間、見直しを含めてPDCAに5時間かかるとすると、一月に1万円、1年で12万円、10年120万円、50年で600万円の損失が発生している計算になります。
600万円あれば子供を大学に進学させることができます。住宅予算もランクアップできます。家族旅行にも行けるでしょう。老後の資金準備にも充当できます。シニア世代ならいざ知らず、20代、30代、40代はこれから数十年家計管理が必要です。一日も早く家計簿アプリの導入をお勧めします。
尚、家計簿アプリの情報をエクセルデータなどにダウンロードできる場合は、FPへの相談の前に家計簿データをお知らせすることで、支出が過大であるのか、適正であるのかあらかじめFP側も理解ができるので、相談時間の短縮につながるのでお勧めです。
FPによっては家計簿アプリの導入を有償で支援してくれるケースもありますので、事前にFP事務所のホームページで確認すると良いでしょう。尚、家計簿アプリの導入にあたり、ネットバンキング(オンラインバンキング)の契約がないと、家計簿アプリの自動家計簿作成の機能が発揮できず、家計管理時間の短縮効果が半減する場合がありますのでご留意ください。