FP目線で回答!マイホーム取得に関するQ&A

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なぜ住宅購入時にFPに相談する人が増えているの?

寿FPコンサルティングが承る相談の中で最も多い相談分野の一つに、住宅購入時のライフプランシミュレーションがあります。人生の三大資金と呼ばれる支出の中でもっとも大きな支出である住宅資金。生活用品や日用品と異なり、数千万円の買い物になるため、失敗が許されません。将来が見通しづらい世の中だからこそ、自分たちの家計の未来に限ってはできる限り見通しをつけておきたい。失敗したくない。そんな不安が見えてくるのがマイホーム相談です。

マイホーム相談におけるファイナンシャルプランナーの特徴は、中立性にあります。高額な不動産を短期間で販売したい不動産会社と失敗したくないため疑心暗鬼の消費者。この両者の間に入って、どちらかというと消費者よりのアドバイスをするのがFPの仕事です。現在の家族構成や収入でどのくらいの予算の家を買うべきか。いま検討中の不動産価格は我が家にとって妥当なのか、といった数字だけでは即答できない疑問を解消するのが、私たちファイナンシャルプランナーに求められる機能です。

よく、FPに相談すると不動産売買に時間がかかると言われます。まったくもってその通りで、私たちは年収を聞いて不動産を提案するような、安易なマイホーム購入によって、将来家計が苦しくなるのを見るのが嫌いです。ですから、じっくり話や要望を聞き取りして、それに基づいて住宅の予算を作り上げていきます。ですから、不動産会社からは好まれていないと感じるときもあります。場合によっては「買わない方が良い」というアドバイスや、「もっと予算を下げるべき」といった、買主の要望とはことなる結論を導き出すことがあります。しかし、これは長い将来にわたり安心してマイホームに暮らすための危険を事前に取り除く作業なのです。ですから、消費者からは歓迎されますが、住宅の販売会社からは望まれない取り組みです。

身の丈に合った物件価格の相場は?(年収倍率、返済比率)

マイホームを買うという行為は通常は一生に一度あるかどうか。昔は住宅スゴロクと言って、人生に何度も家を買い替えることが当然であるような言葉もありました。不動産価格が右肩上がりであれば、家族の増減に合わせて住み替える、買い替えるということを不動産の売却に伴う損なく行うことができました。

一方今は、一部の不動産は値上がりをしていますが、人口が減少期に突入した日本で今後長期にわたって不動産価格が上昇すると考えることは現実的でしょうか?むしろ、売却時に損失が発生するケースが増えてくると考えるのが普通ではないでしょうか。

このように不動産購入自体を慎重に行うことが必要な時代にあって、身の丈に合わない住宅を購入することは危険です。身の丈に合わない住宅とは、「価格が年収に対して高すぎる」「家族構成に対して面積が狭すぎる」などが考えられます。

住宅価格が高すぎると日常生活において住宅ローンの負担が家計の中で相対的に増加することで、生活が苦しくなります。放っておくと家計が回らず貯蓄の取り崩しになることもあります。家を買った当初は住宅ローンの支払いが可能であっても、子供の成長とともに教育費が増えることで、家計全体の支出が増え、黒字が縮小したり赤字になったりという事はよくおこります。子供が成長しても住宅ローンの支払いが滞らないよう将来にわたる支出の増減を理解することが必要です。

家族構成に対して面積が狭すぎると、住宅の買換えが発生します。売却時に不動産仲介手数料が発生したり、引っ越し、リフォームなど、本来かかるはずの無い支出が一時的に増えます。住宅ローンの残高が多いと、不動産を高値で売却する必要がありますが、中古の住宅を高い値段で買いたいと考える人は少ないため、「売値 < 住宅ローン残高」となり、売却自体が成立しないこともあります。子供が増えたのに家が狭くて窮屈、そんな家庭も多そうです。

ちなみに、「物件価格÷年収」を年収倍率といい、年収の5~6倍までに住宅価格を抑えた方が、後々の返済が負担になりません。ですが、都心ですと年収の7~8倍の家を買うケースもあります。住宅ローンを借りることはできても、返すのは厳しい。そんな家庭も多そうです。尚、住宅ローンの審査では、年収比率という考えがあり、例えば年収の30%までは住宅ローンを支払う資金力があるなどという視点で考えます。年収500万円でしたら、年間150万円の支払い、年収が1,000万円であれば、年間300万円の支払いです。

実際の返済比率はより高くても審査に通るケースが多いでしょうから、借りられるだけ借りるという姿勢ですと、買ったはいいが返すのは苦しいということになります。このようなことがある一方で、不動産会社は高い物件を販売したほうが儲けが大きいですし、銀行もたくさんお金を借りてもらえれば金利がたくさん受け取れるのでメリットがあります。特に不動産会社は、家を売ってしまえば、アフターフォローが必要ないため、身の丈に合わない物件を薦めることに後ろめたさがありません。買うまではいい人だったのに、買ったら連絡ひとつよこさないという声は聞こえてきます。

当事務所としては、お薦めの年収倍率は5倍ですが、気に入る物件が見つからない場合は、6倍まで購入可能であると考えております。

資金計画はどうしたら良い?(頭金、貯め方、家賃、社宅、借り上げ社宅)

資金計画とは、物件価格に対して何%頭金を入れて、何%住宅ローンを借りるかを考えることです。昔は物件価格の3割頭金を貯めろと言われたものですが、金利の低い現在であれば、頭金が無くても家を買えるようになっていますし、頭金の貯まる時間を考えると、頭金が無い状態で家を買った方が、人生における住宅費を少なくすることができると考えられます。

頭金の効果は、繰り上げ返済と同じです。住宅ローンが始まる前に繰り上げ返済をするのが頭金であり、住宅ローン返済がスタートしてから余力があればローンを多めに返済するのが繰り上げ返済です。予定より早く返すという意味では同じです。違いは、タイミングだけです。

お金の貯め方は特にお勧めできる方法はありません。しかし、しっかりと家計を管理して支出を抑えるのが貯蓄の基本です。諸費用分は自分で用意してください。金融機関によっては諸費用も借りることができますが、その分毎月のローン返済は多くなります。

マイホームを取得するときに家計が回らなくなるのは、
(1)社員寮、借り上げ社宅などの福利厚生の充実
(2)DINKS時代の購入
(3)家計管理不行き届き
の3パターンです。

(1)の社員寮、借り上げ社宅は福利厚生の一環で社員寮や借り上げ社宅がある場合は、毎月の負担が1万円や数万円程度で住居費の負担が少なくてすみます。一方で、通常であれば、10万円以上するような家賃が半額の5万円の場合、5万円は貯蓄に回ってもよさそうなものですが、実際は5万円支出が増える家庭がほとんどです。すると、住宅ローンの返済額を家賃程度に抑えたいということができなくなります。どんなに頑張っても住宅ローン>家賃となり、住宅ローンの負担感が重くなります。そこで初めて、福利厚生制度のありがたさが身に染みるのですが、結果として社員寮と借り上げ社宅は、社員のマイホーム取得を遅らせ、かつ定年後も住宅ローンを支払わざるをえない状況に追い込むことにつながっています。大変ありがたい制度である一方、ぬるま湯につかり続けるとゆでガエルになってしまう恐れが高まりますので要注意です。

(2)のDINKS時代の購入は、夫婦で働き支出は夫婦二人分だけ、それなりに消費も楽しみ、そこそこ貯蓄もできている家庭に起こります。子供ができて、妻の収入が産休・育休で下がります。さらに復帰後も時短勤務のため、満額の収入は得られません。一方で、乳児期の保育料はごく一部の自治体を除いて高額になります。例えば毎月7万円程度の保育料を支払う自治体もあり、妻の収入は保育料と生活費でほぼ消えてしまいます。子供の教育費を考慮しないで家を買った結果、住宅ローンとの負担が重すぎて家計が実質破たん状態。子供の出産計画を減少させるなどの影響がでます。最悪の場合は、夫婦仲が悪くなり離婚という望まない結果となることもあります。お金が回らなくなると、家族関係もギクシャクするものです。離婚するのは自由ですが、お子さんへの経済的負担や、家を処分しても住宅ローンが残ってしまう可能性、連帯債務や連帯保証があることで、元配偶者の住宅ローン返済が意図的に滞った場合に、対処が難しくなることもあり得ます。家を買うなら、家族構成が確定してからの方が、問題発生の可能性が低くなると考えられます。最近では広い家を買ったものの、子供を授からないというケースもあります。住宅事情としては問題ありませんが、子供のための戸建てだったが、駅近のマンションで良かった。となるケースもあります。

(3)の家計管理不行き届きは最も多いと言っても過言ではありません。皆さん家計を把握していないため、毎月の収入は知っているのに、いくら支出があるのか知りません。毎月赤字か黒字かすら知らない方も多いのには驚きます。そのような状況で家を買うのは危険を知りながら黄色信号に代わった交差点に進入するようなもの。一言でいうと危険です。家計を知らない方は故意または過失双方の可能性があります。いずれにせよ、自分に跳ね返ってきます。例えば、今の家賃が10万円で、新居の住宅ローンが12万円。マンションの管理費、修繕積立金が合計3万円だとすると、固定資産税の負担も月1万円程度の負担(年間12万円)となり、実質的に住居費が16万円と賃貸時代から6万円増えています。そこに駐車場代や駐輪場代などが加算され、支出は見る間に膨れ上がります。はじめは頑張って節約で対応するものの、毎月6万円の支出増に対応するほどの節約はできません。徐々に貯蓄が取り崩され気が付くと破綻寸前。そんな家庭もあり得ます。家計管理を甘く見ると大変なことになる、というお話でした。

住宅ローンの審査と条件はどうなってる?(年収、源泉徴収票、確定申告書、会社員、自営業)

実際に住宅ローンを借りる際は、どのような流れになるのでしょうか。

まず住宅ローンを借りられるかどうかをチェックしてもらいます。貸す側からすると、この人にお金を貸しても大丈夫だろうか、返してもらえるだろうか、という視点でチェックします。さらに、万が一お金が返ってこなくなった場合に、どうやって貸したお金を回収するか、という事を考えます。

最も重要な情報は年収です。基本的には年収がいくらあって、年間いくらまでの住宅ローン返済であれば、問題なく返せるかということを考えます。返済比率と言って、年収の40%まで住宅ローンを払えるだろうとか、35%、30%など金融機関によって異なるのですが、手取りではなく年収(額面、税引き前)の金額をもとに計算します。手取りで計算したほうが現実的なのに・・・と思うのですが、金融機関は支給額面で考えますので、審査の際には源泉徴収票や、確定申告書が必要です。会社員の方は源泉徴収票ですし、自営業の方や会社経営者の方は、確定申告書が必要です。確定申告の方の場合は、売り上げではなく、利益を収入として考えますので、節税しすぎると住宅ローンが組めなくなりますので要注意です。

他には、住居を売却した時にいくらで売れるかを考え、住宅ローンを貸すときに抵当権を設定します。抵当権は、貸したお金が返ってこないときに、抵当権のついている財産を処分、売却、換金し借入の返済に充当するものです。ですから、資産価値の低い不動産ですと、住宅ローンが借りられないということもあり得ます。また、色々な条件が悪く家を建てにくいなどの悪い条件がある場合は、審査が通らないという事もあり得ます。その場合は、追加で連帯保証人を立てるという方法もありますが、全て金融機関と住宅ローンの保証を行う保証会社が取りっぱぐれの無いようにしているというのが現実です。金融機関ってこわいところですので、きちんと返済を続けましょう。

住宅ローン適格物件とは?(面積、法令順守)

家を買う場合は、物件の法令順守などを確認されます。建物を建ててはいけない場所に、家が建っていないか。道路に接しているか、道路の幅は一定以上あるか、建蔽率や容積率は基準内に収まっているか、違法建築ではないか、延床面積は一定以上あるかどうかなど確認されることとなります。

余談ですが、住宅ローンを借りられる最低の面積は30㎡の事が多いですが、住宅ローン控除を受けるための面積要件は50㎡ですので、シングルの方がマンションを買う場合などはご注意ください。

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