会社員時代には社会保険(厚生年金、健康保険、介護保険、雇用保険、労災保険)の手続きは会社が行い、年金、健康保険などの保険料は給与から天引きされていました。定年後この社会保険がどうなるかを知り、どう対応するかが定年後のライフプランにとって大切なものになってきます。定年後の社会保険が在職時とどう変わるのか、どう行動すればよいかを定年後に主に関係する厚生年金、健康保険、雇用保険について説明します。
1.厚生年金(国民年金)
定年(60歳)を迎え、会社を退職、離職すると、厚生年金の保険料を支払う必要がなくなります。そして特別支給の厚生年金が、一定の要件を満たせば60歳から65歳になるまでの間のご自身の生年月日により該当する年齢から、支給されます。
一方で働いていた会社に継続雇用された場合、または他の会社で雇用された場合などは 継続して厚生年金に加入することになりますが、厚生年金の額と給与や賞与の額に応じて年金の一部または全額が支給停止となる場合があります。これが「在職老齢年金」というものです。
定年を迎え、離職した場合、配偶者として扶養されていた方は国民年金の第3号被保険者から第1号被保険者になります。したがって住んでいる市区町村の年金窓口への届け出を定年退職日から14日以内にする必要があります。そして国民年金保険料をご自身で納めていくことになります。
第1号保険者になった場合、毎月400円を納める付加年金も加入しましょう。200円×支払月数分の金額が将来的に受けとれる年金に毎年加算されます。
また、支払う保険料と将来受けとることができる金額を勘案する必要がありますが、国民年金基金の加入を検討してもよいのではないでしょうか。
2.健康保険
定年(60歳)を迎え、会社を退職すると、それまで加入していた健康保険の資格を失います。その後の働き方に応じてご自身が加入する健康保険が異なってきます。働いていた会社に継続雇用された場合、または他の会社で雇用された場合などはその会社の健康保険に加入します。会社で働かない場合は、家族の健康保険に被扶養者として加入、退職した会社の健康保険の任意継続者になる、国民健康保険に加入するという3つの選択肢があります。
家族の健康保険に被扶養者として加入する場合は、保険料の負担はありませんが、年収など条件がいろいろあるので該当する健康保険組合等に被扶養者になるための条件について問合せしてください。
退職した会社の健康保険の任意継続者になる場合、保険料は全額ご自身が負担することになります。保険料は退職時の標準報酬月額、その健康保険組合または全国健康保険協会の全被保険者の標準報酬月額の平均額のどちらか低い方に保険料率を乗じた額になります。定年退職時の給与はそれなりの金額だと思いますので、全被保険者の標準報酬月額を選択することになることが多いでしょう。退職した日の翌日から20日以内に手続きしなければなりませんので、忘れないようにしましょう。
国民健康保険の加入の場合も保険料は全額ご自身が負担することになります。保険料は基本的な部分は所得割、資産割(固定資産)、均等割、平等割により計算されますが、市区町村によって異なります。住んでいる市区町村に事前に確認することが肝要です。計算の基準は前年の所得ですので、定年前の収入が高額ですと、高額の保険料になる可能性があります。加入手続きはお住いの市区町村に退職した日の翌日から14日以内にする必要があります。
会社員を定年退職した場合、概して初年度は任意継続した方が保険料は安いようです。
3.雇用保険(失業給付、高年齢雇用継続給付金、教育訓練給付金)
定年後の働き方により、雇用保険から失業給付が支給されたり、高年齢雇用継続給付金が支給されたりすることがあります。
高年齢雇用継続給付金は、雇用継続した場合や他の会社に就職し、60歳到達時に比べ、賃金の月額が75%未満になっているなどの要件を満たした場合に支給されるものです。
失業給付は、定年後離職し、求職している期間、それまでの雇用保険の加入期間に応じて、支給されます。支給される期間は離職した翌日から原則1年です。
支給される日数、金額は被保険者期間、賃金日額により異なりますが、被保険者期間が20年以上で給付利率が上限額の場合、日額7,042円が150日分支給されます。日額は毎年8月1日に見直しされるようです。
失業給付の支給を受ける場合、ご自身で住所地を管轄するハローワークに行き、「求職申込書」と必要書類を提出し、求職の申込手続きを行います。
手続き後、受給説明会に参加すると第1回目の失業認定日が指定されます。以後4週間に1回失業認定日が指定されますので、毎回の認定日までに2回の求職活動をしてハローワークに行き、都度失業の認定を受けます。認定されると指定した口座に該当期間の失業給付が振込されます。
また定年後に資格などの取得のため、教育機関で学ぶ場合、教育訓練給付金が支給されます。定年退職した翌日以降、受講開始日までが1年以内であれば支給を受けることができます。一般教育訓練で支給額は教育機関に支払った費用の20%(上限10万円)に相当する額となります。ただし4千円を超えない場合は支給されません。受講している講座が教育訓練給付金の対象かどうか、対象の場合は手続きを確認し、申請しましょう。
以上、定年退職後の社会保険について説明しましたが、在職中は会社が手続してくれたことも退職後はご自身で申請することばかりですので、十分理解していただき申請期日までに必ず申請してください。
執筆:真鍋 泰(ファイナンシャルプランナー)